心の虫について

 山代巴という人が福山の奥、府中市のさらに奥の方の町で育ち、2004年に92歳で生涯を終えた。
 夫が共産党員で獄死し、彼女も戦争中を獄中で過ごし、戦後は地方で平和運動に携わって生きた人である。
 獄中の一般の犯罪者との交流や看守との交流、農村での貧しい農婦との交流をもとに多くの小説を書いた人でもある。(荷車の歌は三国廉太郎、望月裕子主演で自主映画としてつくられ興行的にも成功した珍しい映画である。)

 その彼女が自分の中の人に対する嫉妬やねたみなど汚い部分を「心の虫」と呼んで、それをむやみに圧し殺さないことが人間らしく生きる上で重要だという部分がある。そのような気持ちがあるから、犯罪者などの弱者と心の交流ができたのだと感心した。
 確かに、心の虫とは本気で、その居場所を誰もが認め、つきあわねばならぬものかもしれない。