トラジの歌 朝鮮の心を 語りかける

 山代巴 囚われの女たち 第四部「トラジの歌」を読んだ。


 トラジとはキキョウのことで、朝鮮の人たちは日本人に土地を奪われ、山の奥まで、食用としてキキョウの根を求め、エーヘーヨ たくさん採れるとうれしいと、歌った。
 この作者は、日本に住む貧しい朝鮮の娘を心から信頼しあう友として、その歌を歌う姿に、日本人として、その苦しみを強いる国の施策を恥じる。

 日中戦争において、南京陥落時における浮かれた世相を「日本人がのぼせると怖い」という朝鮮の娘が言う。「戦争を喜ばないものを探し出して警察に放り込んで、賛成するまでは出してくれない。そんなことが起こる気がする。」その言葉通り、社会運動全般に一斉検挙がなされる。

 監獄の囚人たち一人一人の過去や看守たちの苦しい立場などを記録しながら、夫とともに歩んだ社会運動の回想が語られる。
 戦前の共産党員にここまで庶民と密着した人がいたのは驚きである。

 また、読み続けて行きたい。