誠実さ 本質を求める 糧となる

 図書館から昨日本を早く返すようにとの電話があった。ということで急いで返しに行き、新しく本を借りた。

 平山郁夫氏の「日本の心を語る」という本をまず読んだ。この人の自伝で、どのように育ち、どのように絵と向き合ってきたかが書かれており、引き込まれるように読んだ。
 この人は瀬戸田出身の画家である。瀬戸田に美術館ができたときに見に行った。日本画の伝統の下に世界的スケールで仏教の神秘を追及しているという印象を持った。同じ広島出身でも奥田元宋の凄みのある画風に対して、大きな調和を感じる静かな絵であった。

 一見凄みを感じさせない画風は本人も「自分の才能に疑問を持った」と語る部分があるが、すごい才能のゴロゴロする中で、あせった時代もあるようである。節制をし、自分の追求する最高のものを信念を持って追求すれば人に描けない本物を描くことができるという境地を得たようである。

 文化の振興のため必要とあれば、政治的な事にもかかわることをいとわぬ強さを持ち、学生やはたまた児童画についても貢献を惜しまぬ腰の軽さが信条でもあることがこの本に感じられ、それを芸術家らしくないと批判する人もある中で、やりとおした事が立派であると思った。