長編の 10部の力作 読み終える

 山代巴の「囚われの女たち」10部作を読み切った。

 特異な作家である。女囚としてとらわれ、女囚たちや看守との触れ合いの中から、同じ目線で対等な付き合いをし、信頼し合う関係を気付いている。

 しかも獄中で、ゾルゲ事件の久津見房子や北林ともと親身に話し合う機会を得ている。敗戦前の「国師」笹川良平のヒットラー顔負けの獄中にきての講演の様子など、実名で興味深い話も多い。
 過酷な下獄生活の中で、家族や友人との信頼関係も捨てていない。日々の生活での人権確立や、幅広い人民戦線を築く素朴な営みから積み上げて、共産党の独善主義を乗り越えようと模索している。

 このような中で、ベストセラー「荷車の歌」を書いた作家であるが、どういうものか地元備後地方でも、ほとんど忘れ去られようとしている。
 住井すゑにも匹敵する人だと思うので歯がゆい思いがする。