戦前は 教養をもっと 尊んだ

 成瀬巳喜男の「鶴八、鶴次郎」をユーチューブで見た。昭和13年の映画である。
 新内の三味線と語りの男女の物語で長谷川一夫山田五十鈴の息があった名品である。藤原釜足が渋く脇を固めている。

 新内等、よくわからないのだが、当時はその良さを味わうことのできる旦那衆が結構おり、田舎の場末でも新内の語りを聞く客はいたようである。

 地味な芸をしんみりと聞く客の様子と芸人のプライドのぶつかり合いは何とも言えない。教養を尊重する風潮が無ければありえないことである。
 分かりやすさのみ求め、奥深い芸を軽んじる風潮の現代から見て、羨ましい限りである。