幸田文 心のあやを 垣間見せ

 幸田文の「台所の音」を読む。短編小説集である。この人の文章は独自のものあるが、そのくせ父露伴のにおいがするのがうれしい。

 細かい音や、げたの柾目、雪に残る下駄のあとなどのこだわりや、気遣いの変化など、緊張感のある中におかしさが感じられる。

 話は変わるが、ゲゲゲの女房以来NHKの朝ドラを週4回程度見ている。ゲゲゲの時の風間杜夫、ひまわりの時の白川由美など個性派俳優が出ていて面白く見ている。今回は小林薫に目が離せないし、戦前の都会の生き生きした世界が漫画のように描かれていて楽しい。敗戦以来、どうも戦前は暗黒時代であったかのように描かれるものが多いが、都市を中心に人々は生き生きしていたのではないか。このように戦前の活気とロマンのある時代を描く番組が見られるのは楽しい。