吉村昭 取材のすごさ 恐れ入る

 吉村昭の「関東大震災」と「三陸海岸津波」を読んだ。「大津波」については書評その他で、評判を知っていたので、さほどでもなかったが、「関東大震災」にはびっくりした。

 地震の怖さがはらわたにしみこむほど伝わってくる。20万人以上が死んでいるのである。地震での火事の怖さと、自警団による朝鮮人の無差別殺害の迫力は、実名など詳細に入っているので、圧巻である。拘置所に保護されている朝鮮人も警察官をものともせず、引きずり出して殺している。

 情報の乏しい中、人間としての理性を失わないのは結構難しい事を教えてくれる本である。